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We've Been Always Hereトランスジェンダーと小さな配慮

Haru
July 20th, 2020

ある調査によると、アメリカ人の8割はトランスジェンダーの知人がいないという。よってトランスジェンダーに関して人々が得る情報の多くはメディアから来ている。トランスジェンダー当事者たちもそれは同じで、自分を知ろうとしてメディアに頼ることになる。しかし頼ったその先に自分の姿が無かったり、あるいは自分が願っていた結末とは違ったことが描かれていてさらに自分を隠そうとする。こういったジレンマがセクシャルマイノリティに対する理解がなかなか社会に浸透してこなかった原因とも考えられる。

Netflixのドキュメンタリー番組「Disclosure」(邦題:「トランスジェンダーとハリウッド:過去、現在、そして」)では、現在活躍しているトランスジェンダーである著名人たちのインタビューとそれに関連した映画のワンシーンが交互に繰り広げられ、これまでの映像業界の作品がいかにトランスジェンダーの人たちに対して乱暴であったかを思い知らされる。ひどいシーンでは、彼らの裸を見て嘔吐する人の姿だったり、トランスジェンダーを受け入れきれない人たちが彼らに暴力をふるっている姿などが公開されている。 また、偏見や差別、人種の問題とも深く関わっており、映画に出てくるトランス女性で多いのが売春婦役の姿。実際の調査でもトランス女性はセックスワーカーである人が多いのだが、これも雇用差別という背景がないままに、下品な売春婦役としてストーリーが展開されていく。さらに黒人トランス女性を嘲笑う姿には、奴隷時代に一部の黒人が去勢されていたということから、女装した黒人は去勢されているも同然、という文脈が含まれている。

トランスジェンダーに関する問題に限ったことではないが、一番恐ろしいのはこういった映画のワンシーンだったり、メディアや広告を通して無意識的に作られた価値観が、私たちの社会や個人のライフスタイルに溶け込んでしまうということ。そしてその価値観が溶け込んだまま社会が進行してしまうということ。トランスジェンダーの人たちが社会に生きづらさを感じる場面の一つだという「性別欄の選択」。日本では最近、履歴書の性別欄の廃止を求めるための署名活動も行われているようだが、これも性別は二択という価値観が溶け込んだまま社会が進行してしまっていたことの一つなのだろう。

ただ、おそらく多くの人が感じているように、セクシャルマイノリティに関する問題は以前より広く認知されているようにも感じるし、ジェンダーの問題を解決しようとしている企業は少なからず現れている。Lobsterrのvol.68で紹介されていたセクシャルウェルネス製品を販売する「Cake」という会社のブランディングと製品には、性別はよりニュアンスがあって流動的なものとなり、伝統的な男女関係はもはや例外とさえ位置付けられるようになる、というメッセージが込められているそうだ。

個人として大事にしていきたいこととしては、これまで自分を形成してきた考え方や価値観の枠組みのようなものを一旦取り外して、フラットに物事を見つめること。そして小さな配慮を忘れないこと。 個人の集合体で企業が成り立っているとすれば、個人の一つの意見が企業を変えることだってあり得る。自社サービスで使用する顧客情報の「性別欄の選択」やこれまでおこなってきたブランディング、そして広告の出し方にも配慮が生まれてくるかもしれない。

「Disclosure」のインタビューシーンで女優のラヴァーン・コックスが言っていた「私たちはいつもここにいる」という言葉。これまで自分たちのアイデンティティが理解されなかったことへの悲しみが含まれていたようにも思える。 セクシャルマイノリティを含むあらゆる分野のマイノリティな部分に目を向けること、そしてそれらを理解しようとすることを一個人として大切にしていきたい。


🌏What We Read This Week

美白製品というレイシズム

米国から世界に広がった BLM ムーブメントが発端となり、美容ブランドは、美白・美肌効果を目的とした製品に組み込まれた人種差別に対処するよう、大きな圧力に直面している。 ロレアル、ユニリーバなどの世界的なコングロマリットは、白い肌が望ましいとする製品の名称変更や削除を始めており、ロレアルは製品から美白に関する記述を削除することを発表し、ユニリーバはインドやシンガポールなどの南アジア諸国で販売されている美白クリーム「フェア&ラブリー」を「グロー&ラブリー」に改名した。ユニリーバのフェア&ラブリーは、2019年のアジア太平洋地域におけるユニリーバのスキンケア総売上高の約27%を占めている。 しかし、アジアの消費者にとってこの動きを素直に賞賛することは難しい。中国では、一般的に「完璧」な女性を表現する「白富美」や「黒く醜い貧しい」を意味する「黑丑穷」という言葉があるように、白く美しい肌が理想の姿として深く根付いている。中国の国営メディアPhoenix Weekly のオンライン世論調査によると、6,400人以上の回答者のうち、人種差別に敏感になる企業を支持しているのはわずか9%で、半数以上が肌の色が明るいことへの言及を削除する動きは「ばかげている」と回答している。上海の市場調査会社 Daxue Consulting のマーケティング戦略アナリストである Sofya Bakhta は、「アジアの消費者は独自の美の理想を持っていて、おそらく、彼らは何十年もの間に形成された基準をまだ放棄する準備ができていない」と言う。 雑誌や映画などを通して、白人が憧れの人物象であり、美白が究極の美であると何十年も無意識のうちに刷り込まれてきたアジアの消費者にとって、突然の西洋の期待をすぐに受容することは困難でもある。しかし、これまでの偏りすぎた価値観を放っておくことは社会にとっても、企業にとっても良い結果をもたらすことはないだろう。

Beauty ideals were built on racist stereotypes. What now?

ケニアよ聞いてくれ

ケニアでは1992年に多政党政治が復活して以来、ポスト・エレクション・バイオレンス(選挙後に起きる暴動)が、長年続く問題になっている。2007/2008年の選挙後の暴力事件ではジャーナリストやメディアも非難されることになった。 主流メディアなどが偏った報道をしているとして非難されているなか、この記事の筆者で、ナイロビ大学で哲学とメディアを教えるジャシンタ・マウェウは、コミュニティラジオが時代に果たしている役割について注目し、それを研究した。 ケニアにはラジオ局が豊富にある。人口約4700万人のケニアでは、農村部で95%、都市部では94%の人が家庭でラジオを利用している。 2007/2008年の選挙後の暴力事件が発生した際、クールなテンションで緊張を和らげ、平和的なメッセージを発信していたラジオ局を彼は発見した。キベラスラムを拠点にする「Pamoja FM」、コロゴチョスラムの「Koch FM」、スワヒリ語で「平和」を意味する「Amani」から名を冠した「Amani FM」も平和的なメッセージを定期的に発信している。 「コミュニティラジオは、メインストリームの放送番組やプリントメディアよりも人々との距離が近いため、平和的な対話が行われる空間を提供している」と、マウェウは言う。 多様な民族や政治的グループに属するケニア人の間では、メインストリームな空間では信頼関係が生まれにくく、激しい争いが今まで通り続いてしまう。緊張を和らげるマイクロなコミュニティが、平和の橋渡し役として、これからのケニアを担っていくことになるかもしれない。

How community radio has contributed to building peace: a Kenyan case study


📽The Movies We Watched

EAT PRAY LOVE

結婚生活、新しい恋。何もかもがうまくいかない、ジュリア・ロバーツ演じる主人公のリズが、イタリア、インド、バリを旅しながら、そこで出会う人々と時間を共にし、自分を見つめ直す物語。 最近、ジュンパ・ラヒリの「べつの言葉で」を読んだのですが、ラヒリの姿が、この映画のリズに重なるような、そんな作品でした。

PATERSON

妻にキスをし、バスを走らせ、愛犬と散歩をする。そんな主人公パターソン(アダム・ドライバー)の何気ない日常のストーリーが、美しい「詩」と共にゆったりと流れていく。 映画を見終わったあとに、「もうちょっとこの世界観に浸っていたいな」と、思えるような作品でした。アダム・ドライバーのなんとも言えない表情が素敵です🙂

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