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The Benefit of Corporation企業のゆくえ

Haru
September 21st, 2020

Toasterr『Diverse Perspectives』で紹介した「B Corpを求める理由」という記事の内容からも感じられるように、B Corp認証を得た会社(いわゆる社会的利益を追求する会社)や、ミッションやストーリーなどの価値観で駆動している会社の存在は、これからの企業のあり方を変化させていくのだろう。

現代において、いい会社とはどういったものなのだろうか。2017年に公開された『WIRED』の特集「21世紀のいい会社論」の一部、「B-Corpという挑戦––ミッションは「利益」に優先するのか?」では、ニューヨーク在住のジャーナリスト佐久間裕美子さんが、B-Corpを考案した「B Lab」の設立者ふたりを取材して記事を執筆している。少し前までは、たとえ企業が「株主の利益を最大化すること」以上に重要なゴールがあると信じている場合でも、当時のアメリカの会社法には、それらの考え方に対する保護がなかった。営利企業が「社会的利益を追求したい」という信念を抱いていても、四半期ごとの利益によって株の相場が上下するのであれば、企業は長期的な責任よりも、短期的な利益を優先せざるをえない。そういった背景を抱えたなかで生まれたのが、企業がどれだけ「公益を考慮しているか」を認定するNPO『B Lab』だった。設立者のひとり(ジェイ・コーエン・ギルバート)は記事のなかで、「当時、フェアトレード、オーガニック、LEED(環境性能評価システム)など、商品を認証する制度はあったが、企業のあり方を認証する制度はなかった。」と語っている。

こういったムーブメントは企業が社会的に認知され、活動しやすい環境をつくるための効果的なシステムになっているのだろう。「いい会社」の定義は、どの視点でそれらを観るかによっても変わってくるかもしれないが、少なくとも、株主の利益や会社の短期的な利益だけにフォーカスせず、社会全体(さらには地球全体)にまで視野を広げ、ビジネスを実行している会社は、人・コミュニティ(地域)・地球を含めた、より包括的な幸福を満たしているように思える。

独自の価値観を重視し、社会責任(Social Responsibility)に重きをおく企業は、消費者のハートもキャッチする。『パタゴニア』はその最たる例かもしれない。彼らは、B-Corp認証の際に基準となるインパクト・スコアで、圧倒的な数値を叩きだして認定されている。「環境」が彼らのブランドの中核にあり、たとえそれが政治的な場面だろうと、彼らはブランドの価値観から離れずにビジネスを実行する。そのため、その過程で顧客を失ったこともあるが、それは信じられないほど熱心な顧客層を生みだし、ブランドの愛を共有することにもつながっている。『パタゴニア』同様、環境に配慮する企業はたくさん存在していて、『Apple』は2030年までに、サプライチェーンによってうまれる二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を約束し、『Microsoft』は2030年までに、サプライチェーンとバリューチェーンに関連する排出も含めて「カーボンネガティブ」になると発表している。

ただ一方で、企業が社会責任に重きをおくことにより、周りからの圧力をうけるというリスクもあるかもしれない。特に今回のBlack Lives Materr運動では、たくさんの企業がラベルを貼ったように活動し(いい意味でも、わるい意味でも)、ラベルを貼っていない企業は強く責められたりもした。もちろん企業が社会活動に積極的に参加するのはいいことだと思う。しかし、ソーシャルグットなおこないを強く促すような圧力や、それらをSNSで過剰に発言することが世の中にはびこってしまうのも、これからの企業のあり方(発言や発言しないことも含む)についての懸念材料といえるかもしれない。

消費者の動向、さらには社会の状態を考慮すると、これから企業がビジネスをおこなっていくことへのハードルは高いかもしれない。しかし、世の中には、まだ知られてはいないものの、きっと素晴らしい価値観をもってビジネスをしている企業がたくさん存在しているのだろう。消費者として意識したいことは、それら企業のミッションやストーリーに気づき、ふれること。ストーリーを理解した消費者が企業とつながり、一緒にビジネスを成長させていく。共感の武器化ではなく理念のリスペクトを、傲慢な態度ではなくやさしく柔軟なふるまいを。そんな明るい未来を想像している。


🌏What We Read This Week

コア・ナラティブを定義する

世界をリードする企業を言葉で成長させるストーリーテリングスタジオ、『Growth Supply』の創業者が、自身のブログで製品の売り方についての考えを伝えているので紹介したい。 「Something Bigger(もっと大きなもの)」を売るということは、モノよりも大きなアイデアを売ることで注目を集めることであり、モノを(ハードに)売ることでドルを獲得することではありません。『Growth Supply』では、その”もっと大きなもの”を”コア・ナラティブ”と呼んでいます。コア・ナラティブとは、製品の先にあるものを売ることです。コア・ナラティブを定義することで、製品を人びとに押し付けることなくそれらを販売することができ、ビジネスが成長・進化していく中で、会社全体の行動に良い影響を与えることができます。 サービス運営者と顧客を結ぶメッセージングプラットフォームの『Intercom』は、つまらないチャットボットアプリをハードセールスすることはしていません。彼らのコアとなるナラティブは「インターネットビジネスをパーソナルなものにする」というもので、このナラティブは、リリースする機能の決断から、すべてのチームの指導に至るまで、会社全体の行動に影響を与えています。会社のコンテンツチームは、Intercomで自動メッセージを送信する方法についてのブログ記事を書くのではなく(ハードセールス)、顧客を巻き込むためのメッセージの作成について話しています(ハードセールスを超えて)。そして、創設者のデ・トレイナーによると、このような価値駆動型(製品駆動型ではなく)のブログは、彼らの最も効果的な武器になっているとのことです。 「ナラティブ」という言葉を使うと、あなたのやっていることに「ストーリー」という角度を加えることができるので面白いです。これにより、組織内の誰もが、すべてのタッチポイントでストーリーを理解し、販売することが容易になります(つまり、伝えることができます)。『Public.com』のCEOであるリーフ・アブラハムが言うように、ナラティブ・ドリブンな企業にとっては、長期的に軌道に乗るために、アイデアを取捨選択することができるのは大きな利点です。逆に言えば、方向性を示す明確な北極星を持っていなければ、途中で得たシグナルが将来の方向性を決定することになります。 どのようなビジネスでも、コアとなるナラティブを売る(伝える)ことができます。あなたの会社が会計ソフトを販売している場合、実際には会計ソフトを販売しているわけではありません。あなたは顧客により良い生活を販売しているのです。そして、そのような顧客の成功を基にして、コアとなるナラティブをつくるとき、あなたは顧客に対して危険で利己的なことをするのをやめるでしょう。自己宣伝のためのニュースレターを書いたり、強引なホームページのコピーを書いたりするのではなく、顧客が本当に自分のしていることをより良くするのに役立つ、真の価値を提供することができるようになるのです。 「Something Bigger」を販売することは、モノ(ハード)を販売することによってドルを獲得するのではなく、モノよりも大きなアイデアを販売することによって、それらを気にさせるチャンスを与えてくれます。そして、そのもっと大きなものとは、あなたのコア・ナラティブです。もしあなたがカヤックやカヌーをレンタルすることのできるパドルスポーツのお店を経営することにした場合、ほとんどの人はカヤックの表面上のデザインや強化樹脂のパドル部分を気にすることでしょう。顧客は夏の午後を満喫したいのです。大切な人たちと一緒に時間を過ごし、暖かい風を感じ、デスクワークで疲れた筋肉を伸ばしたいのです。 ボートを売らずに、水の上での時間を売りましょう。

How to sell something bigger than your otherwise boring business

シリコンバレーの良心

先日公開されたNetflixのドキュメンタリー『The Social Dilemma』では、ソーシャルメディアが個人レベルでどのように消費者に影響を与えるかを実証し、一見なんの罪もないように見えるテクノロジーが、システムの裏側で我々の行動をどのように操作しているかという現実を明らかにしている。このドキュメンタリーの中心的存在である元Googleの倫理デザイナーで、「シリコンバレーの良心」とも呼ばれているトリスタン・ハリスのインタビュー記事を紹介したい。 世界は長い間ソーシャルメディアのポジティブな用途を認識してきた。有益な情報がすぐ手に入り、世界中に友達を作ることができ、愛する人と連絡をとるためのライフラインでもある。一方で、精神衛生上の問題やフェイクニュースなど、ソーシャルメディアによる負の影響はますます大きくなっており、この負の側面はプラットフォームを運営するテック企業によってより肥大化している。 「ただで商品を使っているなら、君がその商品だ。」という言葉があるように、私たちがInstagramやYoutube、Googoleの検索エンジンなどのサービスを無料で利用している時、自分がそのプラットフォームの売り物であることを認識しなければならない。広告でお金を稼ぐ企業にとっては、どれだけユーザーの注意を奪い、どれだけ広告を見せることができたかが成功の物差しだ。注意を引くという目的の上では、真実のニュースよりもフェイクニュースをトップに表示することが正しい解となる。また、広告ビジネスでは予測が何よりも大切で、その予測には大量のデータが必要になる。テック企業は、私たちが何に「いいね!」をしたか、そのコンテンツをどれくらい見ていたかなど、全ての行動履歴を記録し、私たちの好みや行動を予測する。そしてこれが、ユーザーの中毒性を高めることにつながる。「行動を変えたくない世界中のソーシャルメディアのユーザーと、プログラムの変更を拒否するテック企業との間には、いわば膠着状態の麻痺感があります。 テクノロジー企業が運営する競争環境を変えなければならない。」とハリスは話す。 人間の脳は、まだサバンナから来た古代のプログラムが脳に組み込まれており、 自分が持っている感情を変えることはできない。私たちは、常に新しさを求め、社会的承認は良いと感じ、損失嫌悪は悪いと感じる。システムの裏側を知っているからと言って、免疫がつくわけではない。だからこそ、私たちを守るために政府が行動し、中国やロシアのような権威主義的で閉鎖的なデジタル・インフラに勝る西側のデジタル・インフラを構築することが必要だ。 今の子供たちは、会ったこともない1万人の社会的承認を得るのが当たり前だと考えるし、普通の女の子でいるよりも、メイクアップを売るインスタグラムのアカウントに時間を費やす方が儲かるとも考えている。私たちは、この集団催眠術を10年もやっており、現在の世界が理想の姿ではないことは明らかだ。プロダクトを作っているテック業界の人でさえ、自分の子供に彼らの製品は使わせていない。私たちは、ラボのネズミのように実験対象として扱われ、この非人道的なインフラの中で生活していると言うことを認識しなければならない。「この映画を通して、 真の自由とは何かという会話が生まれること、そして、我々が注意をそそぐべき価値のあるものは何なのか?と人々が自分自身に問いかけてくれることを願っています。」とハリスは言う。

Tristan Harris 'We're 10 years into this mass hypnosis.'


📽The Movies We Watched

THE SOCIAL DILEMMA

シリコンバレーの比較的少数のエンジニアが、私たちの考え方、行動をどのように操作しているのか。ソーシャルメディアや検索プラットフォームの背後に隠された陰謀をドキュメンタリー調査と家族のストーリーを組み合わせたユニークな手法で暴露している。Center for Humane Technologyのトリスタン・ハリス、Facebookの「いいね!」ボタンの共同発明者であるジャスティン・ローゼンスタイン、Pinterestの元社長でFacebookの元マネタイズ担当ディレクターのティム・ケンダルなど、その他多くの著名なテック系内部告発者やイノベーションリーダーによる説得力のあるインタビューが見所です。

AMERICAN FACTORY 美国工厂

バラク・オバマとミシェル・オバマの製作会社『Higher Ground Productions』が手がけた、Netflixオリジナルドキュメンタリー。アメリカの工場を買収し、新しく工場を設立した中国大手の自動車ガラスメーカー『フーヤオ』。そこで働くアメリカ人と中国人の日常を描く。 「中国企業で働くアメリカ人労働者」「それぞれの文化」「工場で働く人たちの労働環境」「機械化の台頭」など、様ざまなタッチポイントで作品を観ることができました。オバマ夫妻と本作の監督(スティーヴン・ボグナーとジュリア・ライカート)の対談も配信されています。


🧐Cool Things of The Week

PUBLIC TRUST

アウトドアブランド『patagonia』の映画製作チームが手がける、アメリカの公有地に関するドキュメンタリー映画『Public Trust』が、日本時間の「9月26日午前9:00」にYouTubeで配信されます🏔特設サイトも公開中。

パラサイト 半地下の家族

第92回アカデミー賞の作品賞(ほか4部門)を受賞した、ポン・ジュノ監督による映画『パラサイト 半地下の家族』が、沖縄の『桜坂劇場』で公開されています🌺 上映は9月25日まで予定です。

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Meaning of Family

家族とはなにか。一見すると誰もが答えられそうなこの簡素な問いについて、少しだけ考えてみた。遺伝的な繋がりがあるか、戸籍上に家族関係が記載されているか、日常の生活を共にしているか。真剣にこの問いに向き合おうとすればするほど、家族という概念の複雑さが見えてくる。

September 7th

Interaction With People

良いことなのか、そうでないのかはわからないが、本を読んでいると、集中しているはずなのに、ふと気づいたころには別のことを考えていた、なんてことがよくある。映画を観ているときにはそのようなことはないので、映画の次々と画面が切り替わるようなスピード感のない本

August 31st
©︎ 2021 Toasterr
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