今年は以前にくらべてたくさんの映画を観るようになったので、時間が経っても思い出せるようにと、心にのこった映画は Notion のデータベースに格納するようにしている。心が揺さぶられ、感動を覚える作品にはそう何度も連続的に出逢うことはないので、まだほんの数作品しかそこには登録されていないが、最近また、心にのこる気持ちのよい映画に出逢えたので、それを新しく更新することにした(年明けにでも、2020年に観た映画をリスト化して、個人的に「勝手にアカデミー賞」なんかをやっても面白そう)。
今回、新たに追加したのは、オムニバスSFシリーズ『ブラック・ミラー』のシーズン3に収録されている『サン・ジュニペロ』という作品(どちらかというと映画というよりはドラマにカテゴライズされるのだと思う)。この物語は、テクノロジーが発展し、現実世界とは別に、クラウド上に精神を取り込むことができるという設定で、現実世界ではなく仮想世界で出逢った女性ふたりの恋愛を描いている。この作品では、肉体が消滅しても、生き続けることができるといった、テクノロジーと倫理の問題から、人種やジェンダーの問題まで、様々な社会問題を提示しているのだが、個人的にはそれらを飛び越えたふたりの恋愛に見入っていた。相手の現実世界での姿を知らないふたりが、いまある環境で愛し合う姿はなんとも美しく、その「愛」を目の当たりにすると、そこにテクノロジー、人種、ジェンダーの問題は存在さえしていない気がした。終盤でふたりは、仮想世界からは想像もできなかった姿で現実世界で再会するのだが、それでも再び仮想世界へ戻り、恋愛関係が継続していく様子には、ものすごく心を揺さぶられる。
ぼくら人間の心にとって栄養となるものは、おそらくこの世にたくさんあるのだろうけど、「愛」はまさになくてはならない存在なんだなと、この作品を観て改めて思った。『Lobsterr Letter』vol.83にある「幸福のディール」というタイトルで紹介されていた記事には、「幸福とは何か」を追求すると「愛」であることに結びつくと書かれている。1939〜1944年までの間にハーバード大学を卒業した男性(個人的にはもっと対象を広げて欲しかったが)を90代になるまで追跡した結果、最も幸せな生活を送ったと報告した被験者は、家族への強い絆だったり、親密な友情、豊かな恋愛生活を送っていた人たちだという。
「幸福のディール」のとおり、愛には様々なかたちがあり、かつそれは恋人だけには限られないのだろう。最近読んだケン・リュウ氏の『紙の動物園』は、コネチカット州(アメリカ北東部)の郊外に暮らす中国系移民の母と子の物語。けっしてハッピーエンドとはいえないものの、口をきかなくなってしまった息子へ送った母親の手紙には、思わず胸を打たれ、愛について考えるきっかけをもらい、自分自身も家族を大切にしようと思った。
人に優しくすることは人生を豊かにする上でとても大切なことのように思えるので、ぼくの部屋の壁には「Be Kind」と書かれた付箋が見えやすい場所にはられている。ただ、いま振り返ってみると、それは「いい人生を送るために人に優しくしなさい」というような、どこか戒めのような感じになっていたのではないかと思ってしまった。『サン・ジュニペロ』は仮想世界での物語だったが、その愛のある世界観をもって、いまの世界を生きていきたい。「Be Kind」という文字の奥に愛を秘めながら、家族や友人たち、周りにいる大切な人たちを心から大事にしていきたい。
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