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A Small Step Means A Lot変化のために

Sentaro
July 6th, 2020

5月25日にアメリカで発生した、黒人男性が白人の警察官に首を圧迫されて死亡した事件を受け、全米に広がった抗議デモ。連日メディアで大規模な抗議デモの様子が取り上げられている。メディアの報道を通して、「抗議デモや暴動、略奪をする理由がわからない」、「悲しく残念な事件だけど、破壊するなんて共感できないな」と考える人もいるだろう。しかし、ああいう暴力行為を「黒人っぽさ」とか「黒人の傾向」のせいにしてはいけない。そのような考えこそ、この問題の根元にある人種主義的なものである。

では、だからといって、「Black Lives Matter」と叫んで、盲目的に白人至上主義者を批判すればいいのではない。白人至上主義者の多くが根底にもつ感覚は、「自分たちはリベラルな社会秩序の犠牲者である」ということ。そして、多くの人が礼賛する多様性は、白人迫害と同義だと考えている。事実として、2060年にはアメリカの総人口における白人の割合は5割近くまで減ると予測されている。彼らからしたら、優雅に何不自由なく暮らしているところにノコノコと土足で上がってくる有色人種に庭を荒らされて仕事が奪われたという感覚に近いだろう。そして、白人至上主義者は日本人に問いを投げかける。「もし日本に何百万人もの外国人が押し寄せてきたら違和感を感じませんか? それに対して異議を唱えたとき『人種差別主義者』というレッテルを貼られたらどう思いますか?」と。

アメリカと日本は全く異なるバックグラウンドを持っているため、BLM は対岸の火事のように想えるかもしれない。だが、国というのは数多の人の集合体であるが故に、彼らの問題は私たちの問題でもあり、BLM の背景を知ることは私たちの国にとっても大切なことなのだ。

アメリカの Black Lives Matter (BLM) ムーブメントが起きてから、「人種的特権」というものを目にするようになった。アメリカにいる白人は、何もしていなくても、その肌の色だけで相対的に有利な地位を獲得しやすく、入学、入社、昇進などのあらゆる側面で優遇されやすい。彼らはそのことについて無自覚であることも多い。そしてこれは、無自覚のうちに私自身が享受しているであろう特権について考えるきっかけを与えてくれる。たとえば、国別の女性役員比率に関する調査によると、日本の女性役員比率は5%と主要7カ国(G7)で最下位というだけではなく、G7以外の国にも大きな差を付けられている。日本に住む男性というだけで、私は多くの特権を享受しているのではないかと考えさせられる。

日本で生活するなかで「人種」というものを意識する機会は滅多にないだろう。日本人に、「あなたはレイシスト(人種差別主義者)ですか?」と聞くと多くの人が「違います」と答えるだろう。そもそも人種差別ということについてそこで初めて考える人も少なくないと思う。ニュースで流れてくる映像をみるだけの受動的な姿勢ではこの問題の表層的なものしか理解できない。この問題を本当に理解したいのであれば、自分から「知る」という行動を起こすことが大切だ。もし日本でも「Black Lives(黒人たちの命)」が本当に「Matter(大切)」なら、そういう努力をするだろう。アメリカン大学 Antiracist Research and Policy Center のディレクターで How to Be an Antiracist の著者であるイブラム・X・ケンディは言う。「レイシストの反対は『レイシストでないこと』ではありません。『アンチ・レイシスト(=反人種差別主義者)であること』なのです」。

では、アンチ・レイシストであるためにはどうすればいいのだろう? まずは歴史を知ることだと、ケンディは話す。BLM の背景には何百年にもわたる歪んだ歴史と蓄積した怒りがある。264年間白人から所有物(奴隷)として扱われ、そのあと100年も法律によって資産蓄積を阻まれた。2008年にアメリカの歴史で初めて黒人の大統領が生まれ、アメリカは変わったと多くの人が祝祭をあげたが、人種的不平等・差別は今も根強く残っている。白人と黒人の資本の格差は現在も広がり続ける一方だ。行政が彼らを不利な立場に置くような姿勢を取り続けてきたこと、そして白人の人々が無意識のうちに享受してきた特権について理解することも、アンチ・レイシストであるための一歩になる。

ここで、アメリカの歴史を学ぶために私が参考にしたドキュメンタリーを少しだけ紹介したい。一つ目が、Netflix と Vox が共同で制作している「Explained | Racial Wealth Gap」。黒人差別の歴史を学ぶことができ、現在の不平等、格差がどのようにして作られたのかをわかりやすくまとめられている。二つ目が、Netflix オリジナル作品の「マイ・ストーリー」。第44代アメリカ合衆国大統領バラク・オバマの妻で、アメリカ合衆国史上初のアフリカ系アメリカ人のファーストレディであるミシェル・オバマ氏のドキュメンタリー。このなかで彼女がマイノリティの若い人たちと積極的にコミュニケーションをとる姿が描かれている。彼女は言う、「この国の未来は次の世代にかかっている。彼らが活躍できるように彼らを支援していきたい。」。彼女の経験から語られる黒人差別の現実に心が痛む一方で、アメリカという国の未来に対する希望を見出すこともできる。ぜひみてほしい作品だ。

日本で暮らす私たちにとっては、いまアメリカで起きている問題を 100%の自分ごととして理解するのは難しいかもしれない。それでも、わからないかからこそ、共感が難しいからこそ、もっと知りたい。ひとりの力で社会を変えていくことはできないけれど、一人ひとりの「知る」という小さな一歩から、物事は変わっていくのだと信じている。地球の裏側にいる名前も知らない誰かのことを想うことができる、それこそが「人間であること」の大切な意味ではないだろうか。


📽The Movies We Watched

MOONLIGHT

第89回アカデミー賞で作品賞、助演男優賞、脚色賞に輝いた作品。マイアミの貧しい家庭で、麻薬中毒の母親とのふたり暮らし。孤独を抱えながらも自分の居場所を探し続ける主人公シャロンの姿を、幼少期、少年期、青年期の3つの時代に分け、色鮮やかな映像美と情緒的な音楽で繊細に映し出している。 黒人貧困社会での性的マイノリティという設定となっており、BLMなどで分断されつつある今だからこそみたい作品です。

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